白い犬

 

「空っぽな詩集のままでいい」

「ガラガラのライブハウスのままでいい」

「友達には無理に声をかけない」

そう言いながら目覚めた白い犬はカラスの溜まり場から去っていった

 

その夜の犬は自家製の潤滑油で動いていた

自家製の潤滑油で回っていた

リュックの中には谷川俊太郎

地下鉄のザジ』が潜んでいた

いつになく口と滑らかだった

言葉には艶があった

ハーブ酒とソーダ水を嗜んでいた

 

「酒は酔うためではなく 味わうためにある」

「居心地の良い場所を探すより ズレたまま生きていたい」

「錆びつかないための 刺激と七色の風が欲しい」

 

そう言いながら白い犬は家に帰っていった