2019-04-05から1日間の記事一覧

小説は

小説は焼け跡である 小説は師である 小説は料理である 小説は身体の関係である 小説は衝動である 小説は空気を抜き忘れた真空パックである 小説は振り付けである 小説は不死身の儚さである 小説は地図である 小説はこじつけである 小説は我儘である 小説は孤…

空白犬

効き目の足りない言葉を日記に隠す 猛毒なら 劇薬なら 誰かにすぐに見せられる 風の吹かない部屋 身も心も無風状態 最早足せない 最早引けない 知ってる言葉を忘れてしまった 仮面に頼り 箱庭に頼り 言葉に縋る 蛇口を捻る 生えることも 揺れることもない 花…

虹の犬

いい瞬間だけを閉じ込める 虹色の生地に閉じ込め焼き菓子にする 不安は蟻が担いで持って行く 理解の中に滲む汗 冷静の灼熱 不安は犬で 無心は猿だ 否認の低音 他人の和音 理屈に浸かったたくわん 名前だけ新しい駅 夜でも朝でもない無人島のにおい 尽きても…

犬電話

黒い食堂と無色の心臓 血を測る温度計は壊れた洞穴からの声 それは毛むくじゃらの声 チカチカ点滅する声 空気の薄い森へ招待する声 砂時計を逆さまにする声 信じる声 信じられない声 今も振り絞れない声 脱ぎ捨てられない声 命を縫った熊の額に落とした涙が…