年齢犬

 

獣の臭いと

野心とオレンジのインク

心臓にいれたジョーカーのタトゥー

42度のシャワーでも

1000年に一度の台風でも

流せない

毎日が誕生日

眼球が開く日曜日

いつでも歳は取れないが

いつでも若くなれる動物達 

シャキシャキも

クタクタも

コトコトも

全部身体に混じってる

生きてる分だけ傷ついて

愛せる分だけ愛した人生

数字は祠に置いてきた

言葉は言葉自身に返してきた

失くしたままではじめよう

砕けたままではじめよう

今から会話をはじめよう

白い話題をはじめよう

黒い血潮をはじめよう

 

渇き犬

新しい昨日と古い明日

いつもどおりの7時

砂嵐とオレンジジュース

霞む花びら

涙目の喉

嗄れた時間

空きっ腹に文字

空振る熱

妬み

僻み

歪み

年を重ねた紙の上

心臓移植された言葉達

そこは生きていることの果実園

流し台のグリーンチャイルド

心の皮を剥いて

苦手な蜜柑を食べた

今年もクリスマスが来るように

祈りの曲をかけた

神様しか知らない

神様は知らない

全てを知ってるから

何も知らない

今日の犬

 

たとえ数日前でも過去を無理やりほじくり返して書こうとするのは不自然でわたしには難しいことのような気がしてきた。書けることをただ書こう。

 

 昨日は昼間から夜にかけてずっと眠かった。ケンタッキーでローストチキンサンドを食べて、音楽を聴いたり、珍しく漫画を読んでる間もずっと眠かった。帰りの電車も眠かった。帰ってからは昼寝というか夕寝を1時間半~2時間くらいした。何か文章を書きたかったけど無理だった。身体が衰弱してしまっていたみたいだ。睡眠時間を水分時間と間違えて書いた。水の時間とはいったいなんだろう。

 

 今朝目覚めてもまだ眠かった。ウイスキーでも飲んで眠ってしまおうかと思ったけれど、豚汁とお米と珈琲を飲んでグッとこらえた。詩の回路や文章の回路が抜け落ちてしまったような感覚があり、今日はもう書けないかもなと思っていたけれど、結構いいものが書けた気がする。

 

 

inuperrito.hatenablog.com

 

読書もあまり捗らない。最近いろんな人に一番好きな本だ、この本の世界にいきたいと公言しているパティ・スミスの『ジャストキッズ』だけは昨日の夜からすんなり読むことができた。文章がどんどん身体に馴染んでいく、今までとは違う部分に傾注がいく。パティ・スミスのライブかポエトリーリーディングが観たい。彼女に憧れてランボーの詩集を朗読したり、アブサンを飲んだり、白いシャツとサスペンダーを買って身に着けたりした。部屋には『HORSES』のアナログ盤が飾ってある。

 

 朝の文章を書き終えてからは、イエローモンキーやカネコアヤノの新しい作品を聴きながら、友川カズキの詩集を少し読んだりした。昼前には夜ご飯用のカレーを作った。以前ラタトゥイユを作ったら、水分の抜けがいまいちでご飯にかけてカレーとして食べたほうが美味しかった時があったので、今回はラタトゥイユもどきを経由して素直にカレーを作ることにした。作っている間、コレクターズのファーストアルバムを聴いていた。アルバムが終わって、コレクターズのポッドキャストを一話聞き終わるうちに煮込みがすべて終わった。野菜たっぷりの牛肉トマトカレーを冷蔵庫で寝かして夜食べる。

 

 昼間はASKAさんの出演したラジオを聴いていた、喉を壊してしまった時期に8年くらい思うような声が出ず、周囲に休むことを勧められても、歌うことをやめてしまったら自分はもう歌えなくなる、ダメになると思って歌いながら喉の不調を克服した話。わたしも書けなくなることは常に不安だけど、休んでしまうことはある。書き続けることそれ自体は毎日続けた方がいいのか、書かない日があってもいいのかは。どっちが自分に合っているのかは素直にわからない。ただ書くことで自分の中を空っぽにすることで、余白を生むことは良いことだと思う。それによって取り入れられるものは増えるし、いろんな感度も良くなるはずだ。何とかして書く習慣を掴みたいし。もっと深くへ行きたい。もっといろいろと脱ぎすてたい。筆を濃く滑らかにしたい。文章力という言葉は好きじゃない。文章がうまいという言い方もあまり好きじゃない。文才という言葉はあってないようなものな気がする。

自然犬

 

英語と肉球を翻訳する朝

バターの香りと度胸あるペンギンに

「おはようございます」

全粒粉パンは冷凍庫に整列している

そんな朝には五穀米とふきのとうと味噌汁

糸口はない

瞼を濡らす雨はない

名も知らぬ花が咲いている

珈琲を今日も淹れる

晴れた日を思い出して

ガテマラとタンザニアブレンド

縁が欠けたマグカップは人間そっくり

あなたとわたしにそっくり

その穴は裏口

靴を脱いで潜入

あなたを知りたいとは言わない

あなたを助けるとは言わない

裏庭で遊ぼう

裏庭で話そう

口実の柄を見せ合おう

ふたりきりの星の裏

 

 

 

失語犬

 

言葉をわすれてしまいそう

気づいたらもうわすれかけている

言葉はどこにも見当たらない

「失くした言葉の紛失届はもう出されましたか?」

言葉銀行の職員がそう問いかける

地球のどこに言葉がある?

寒い国にある?

渇いた国にある?

わたしの住む場所にある?

陽気になったら言葉はやってくる?

陰気になったら慰めにくる?

死ぬ気になったら言葉に会える?

電話したら言葉は出てくる?

誰かと紅茶を飲んだら言葉は出てくる?

珈琲の残り香で言葉は召喚される?

言葉の子供をなくしました

言葉の種をなくしました

言葉のベッドをなくしました

言葉のイグアナをなくしました

言葉のウイッグをなくしました

言葉のレシピをなくしました

言葉の名前をわすれました

言葉の伝言が聞き取れませんでした

言葉を知らない世界で生きています

言葉はわたしに愛想をつかしました

いやいや言葉とはちょっと喧嘩しただけです

言葉は無期限の家出をしています

不安な目覚めは言葉がいない朝です

言葉のぶんも味噌汁を作ります

夜のカレーも作ります

これは言葉じゃありません

眼鏡をかけて眼鏡を探しているわけじゃありません

わたしは言葉を待ってます

毎日言葉を待ってます

焦ってません

焦ってません

ただ走っているだけです