素直犬

 

 

Twitterから退場したくなる時

 

 Twitterという制度とTwitterという糸口には本当にお世話になりました。Twitterがあったから私の人生があったのかなと思う時もあります。わたしの交際遍歴には必ずTwitterが関与しています。Twitterで「死にたい。誰か一緒に死んでくれないか」と夜中に喚いていた時、「私は死ねないけど、あなたの力になりたい」と声をかけてくれた名前も顔も声も知らなかった遠くに住む人がわたしの唯一の親友です。ザ・イエローモンキーの吉井和哉さんのソロライブの前日に「明日に備えてムダ毛を全て剃りました」とつぶやいた時、「まるで抱かれにいくかのような」という返信をくれた方には、通院先を紹介してもらったり、クリスマスプレゼント頂いたり多方面でお世話になっています。

 

 口下手さや、自分の実体から滲み出る自信の欠如や、幼いころの育ち方やいじめ等で染みついた不安や卑屈の臭い、日毎にムラのある精神状態が原因なのか、社会の中では人間関係を中々築けず、ようやく築けた関係も必ず壊してしまいます。実生活や実学、お金の運用が苦手なわたしにとって、Twitterが人と世の中に繋がるための手段であったことは確かです。言葉さえあれば、過去は関係なく繋がっていける、出会っていける、離れることもできる。

 

 そんなTwitterをやめたくなることは何度もあります。昨夜から今朝にかけてがそうでした。一昨日、久々に珈琲を飲んだせいか目と頭が冴えて、眠りが浅かったせいか夜になって、脳が疲れてきたのも関係していると思います。春に紛れた真冬の気圧のせいもあるでしょう。昨夜は体調自体も悪く、夕食後すぐに横になりました。そんな時にTwitterを見ていると、フォローしている方々の逞しい言葉、優しい言葉、何げなく吹く風のような自然な言葉も棘のように胸に刺さってきました。他人の言葉から漂うにおいや生活の跡、日常の続き、葛藤、踏ん張り、赦し、笑い。それだけ豊かな人と言葉の森に塗れて、自分はあまりにも空っぽな気がして。空っぽだという考えが、肉体や脳の疲労がもたらした錯覚であることも理解はできていて。何とも言えない息苦しさ、生き苦しさがありました。自分はいてもいなくても同じように思えて、それだったらこのまま去ってしまおうかと思いました。そんな風に思うことは何度もあります。不定期だけど定期的だといってもいいくらいしょっちゅう。他人の人生や他人の持っているものを羨ましがることなどはとっくに卒業できていると、健康な精神状態の時は思えますし、持たざることを恨んでも仕方がないと割り切れています。わたしは今年30歳になりますが、武骨で散らかりに散らかった、やたげたな生き方なりに、少しずつ人生の視界は広く深くも、人生の焦点は狭く深くもなっているとは思えます。憂鬱で孤独で周りから随分遠くに取り残されてしまったようにしか思えない夜は、そんなことも一切忘れてしまいます。人目から姿を消して、全てをあきらめたくもなります。

 

 結局Twitterはやめていません。このブログも。読む人があまりに少なくて、書いても書かなくても忘れられてしまうような状況で、閑古鳥は毎日ピヨピヨと鳴いていますが、意地でも続けていこうと思います。わたしの書いた文章に一単語、一文だけでも何か光るもの、救いのあるものが紛れていたら、今はそれでいいです。筆の動きで何か風を起こせたらいいなと素直に思います。

 

 文章ってよくわからないものです。バンドをやるみたいに、マーシャルの原稿用紙とフェンダーの万年筆(またはギブソンの鉛筆)を買って、海外文学(洋楽)のコピーからはじめるとかいうようなものではなくて。名器に頼ることも、過去の偉大な名文からコードを学ぶというものでもなく、人間のこの身ひとつとペンと紙で書かなければならなくて、指針も上達法もよくわからない。文章を読むことだってわたしにはできているのかわからない。わたしの部屋には文字通り本の山がいくつもありますし、これだけ文化や嗜好が多様化した時代の人間にしては本をたくさん読んできたのも確かですが、文章を本当に読めているのかどうかすらいまだに危ういです。結局文章が何なのか、言葉が何なのか未だにわかりません。そういうものだからこそ、わたしはやってみたいと思っています。何もわからなくても、何も掴めなくても、書くことだけがわたしの居場所です。脳の容量には限度があって、うまれた言葉を内側にずっと留めてはいられないし、新鮮さや熱もなくなってしまうからこの先も書いていきたいです。書いて書いて、いろんなものが剥ぎ取られた先の、自分の言葉を見つけたいです。今はそれしか言えませんが。

 

儚さのない姿のまま

儚いふりをする

逃げ出せない場所から逃げ出そうとする

強い言葉

優しい言葉が棘のように刺さる

白い繭と黒字の雨

ラクタを手で荒らし

紙の上を泳ぐ

無精髭と畳と部屋着の記録で船を漕いでゆけ