薄犬

部屋が壁際だけになってしまったみたいだ。今のわたしには上も下もよく見えない。身動きなんて取れない。抱えている口にできない問題で頭がいっぱいというか、頭の中はそれ以外ない。犯罪を犯したわけでもないのに執行を待つ死刑囚のような気分から逃れられない。思考が氷山になってしまい、身体は楼になってしまった。時々涙が出ても何かが溶けたり、解れたりはしない。希望も拠り所もない。解決策などあるわけがない。どうしたらいい。文章だってもう浮かばない。毎日、毎日枯渇の繰り返し。シーラカンスにも餡のないたい焼きにもなれない。わたしは何にもなれない。文章を書く人間にも読む人間にもなれない。部屋ごと重さに耐えられず沈没するだけだ。いや最初から沈んでいるのかもしれない。気づかないだけだ。朝から苺味のチョコレートや、冷凍のお好み焼きと烏賊焼き、レトルトカレーにカジキのソテーを食い荒らした。食事に食欲に何の意味があるのか、文章すら書けない。量が圧倒的に足りない。薄すぎる。もっと書け。書けるようになれよ。