視聴会犬

 

白黒映画とメルヘンが空の梯子から降りてくる

二匹の星と目が合う葡萄のステージで

秘密の箱の鍵を解いて

薔薇の穴の名を叫ぶ

土の匂いに溢れ出す微生物

死を恐れる欲望が目を覚ます

地平線では昼間の太陽が踊りだす

滑らかな涙で錆びた車輪が回りだす

梶の葉の上の天使が俄雨を笑ってる

どこにも行けない私の私小説

堂々と生きる私の非小説

いつでも準備はできている

わたしをわたしに集め直す

奇跡はいつでも苦い一瞬

奇跡は毎日続く

灼熱を忘れぬよう移動式の犬小屋で吠え続ける