散文

狂熱犬

文章が少しずつ書けるようになってきました。できるだけ空っぽでいることで文章が書けるようになる気がしました。誰かのようになりたい、誰かのように書きたいという思いから離れられたら、文章が書けるようになった気がした。誰の言葉も誰の考えも今はいら…

犬史上

2015/1/23 深夜2時47分。もう2年以上シーツの掛かっていない布団の上で彼は正座している。彼は右腕を布団の上に振り下ろす。血圧をあげながら、両足の密着をくずしながら、ホルモンのバランスをくずしながら。プラスチック製の密封容器をもうひとつの密封容…

残骸犬

俺は小説を書きたい。俺は小説になりたい。俺は小説を叶えたい。俺は小説と結ばれたい。俺は小説に泊まりたい。俺は小説のカプセルに泊まりたい。俺は小説のコスモスに泊まりたい。小説という名前がほしいわけじゃない。小説の戸籍がほしいわけじゃない。小…

がらくた

友達がいなくなった。跡形もなくいなくなった。友達の集印帳が紙切れになった。友達のアルペジオが廊下で鳴った。友達を一袋頬張った。友達をミキサーにかけた。友達に電話をかけた。友達が過去になった。友達がシャツの模様になった。友達が跡形もなく溶け…

原点犬

俺は小説になりたい。俺は小説という生き物の仲間入りがしたい。俺は小説の必須栄養素を貪りたい。小松菜とアボカドと豆乳とバナナをミキサーにかけて小説に変えてしまいたい。俺は小説になって時を歩きたい。俺は小説と結ばれたい。俺は小説に泊まりたい。…

犬2(完全版)

2015/1/23 深夜2時47分。もう2年以上シーツの掛かっていない布団の上で彼は正座している。彼は右腕を布団の上に振り下ろす。血圧をあげながら、両足の密着をくずしながら、ホルモンのバランスをくずしながら。プラスチック製の密封容器をもうひとつの密封容…

犬14

ピンク色の鱗と濃い緑の目を持つ新鮮な魚のような憂鬱を朝一で収穫した。バックヤードではとろろがいつまでも出番を待っている。剪定の失敗の後の午後。電気屋でCDRを返品しようか迷っている。図書館で予約した本を取りに行く機会(しお)を逃した。クラゲが…

犬10

今日も目覚めはよくない。早起きできない。お酒も残っている。何となく人に会うのがこわい。一書かなきゃ落とし前はつかない。余計なことをする時間を埋めていく。いつでも書けるように、iPhoneのバッテリーを交換した。これが新品?と思うくらいバッテリー…

犬7

友達がいなくなった。跡形もなくいなくなった。友達の集印帳が紙切れになった。友達のアルペジオが廊下で鳴った。友達を一一袋頬張った。友達をミキサーにかけた。友達に電話をかけた。友達が過去になった。友達がシャツの模様になった。友達が跡形もなく溶…

犬6

髭剃りを失敗した。シェービングクリームをたっぷり肌に馴染ませて剃ったはずなのに、皮膚が削げた。痛くもないのに、血はとまらない。他の場所を剃っている最中、傷口が唇が、口の中が顎が血に染まる。ルーズに血が垂れる。右の人差し指の血、左の手の甲の…

世俗犬

俺は小説を書きたい。俺は小説になりたい。俺は小説を叶えたい。俺は小説と結ばれたい。小説のための小説を書いて、その小説をどこにも提出せずに小説と事実婚をする。俺は小説に泊まりたい。俺は小説のカプセルに泊まりたい。俺は小説のコスモスに泊まりた…

犬2

俺は小説になりたいんだよ。俺は小説に変身したいんだよ。小説家は嘘つきだけど、小説は本当なんだ。血が滴るような小説に憧れるんだよ。小説の条件は、名乗ることだよ。俺は小説だって言うことだよ。それだけだよ。小説なんて文字が並んでいるだけだよ。か…