囚犬イヌ公

黄色い目の雨が降る夜 眼球気球地球全てを担う雨のゼリー 不穏も希望もデニーズのパフェの中 蟻地獄のトラウマを傘の柄にして 下町と呼ばれる大地を踏み均す 明日は来ないが 昨日も来ない 壊れることのない心臓が 毒と独でわたしを支配する 肥やしのような位…

紅い犬

偶然の皮に包まれ 積年の骨を包みし 我が生肉の臓音 球体を転がし 同類へ繋ぐことできず 空気を震わすことできず 寡黙な本能は諦めて眠る 言葉を刻んで差し出して 祓える限りの鈍みを取り除き 滲み残る穢れを残したままで白皿へ盛る 言葉を配列する 透明にな…

花と犬

何一つ出来なかった 約束を一つ一つを破り捨てた 鰹節を血液で煮た ミイラを湯船に浸からせた 最期のお化粧と若さを全て水に流した 明日が来ない宇宙船に乗る ボロボロの犬と白い熊 光る猫を買いに兎小屋を訪ねた 地球を一周する長さの蛇と 寿命の短い不死鳥…

犬の現状

わたしは文章を書くことが全くできなくなってしまってから1年以上が経つ。21歳くらいまでのわたしは間違いなく文章を書くことが苦手だった。常に文章を書く行為そのものに苦闘していたし、他人から「あなたが文章書くのが苦手なのはわかる」と言われることも…

がらくた

友達がいなくなった。跡形もなくいなくなった。友達の集印帳が紙切れになった。友達のアルペジオが廊下で鳴った。友達を一袋頬張った。友達をミキサーにかけた。友達に電話をかけた。友達が過去になった。友達がシャツの模様になった。友達が跡形もなく溶け…

原点犬

俺は小説になりたい。俺は小説という生き物の仲間入りがしたい。俺は小説の必須栄養素を貪りたい。小松菜とアボカドと豆乳とバナナをミキサーにかけて小説に変えてしまいたい。俺は小説になって時を歩きたい。俺は小説と結ばれたい。俺は小説に泊まりたい。…

犬2(完全版)

2015/1/23 深夜2時47分。もう2年以上シーツの掛かっていない布団の上で彼は正座している。彼は右腕を布団の上に振り下ろす。血圧をあげながら、両足の密着をくずしながら、ホルモンのバランスをくずしながら。プラスチック製の密封容器をもうひとつの密封容…

犬14

ピンク色の鱗と濃い緑の目を持つ新鮮な魚のような憂鬱を朝一で収穫した。バックヤードではとろろがいつまでも出番を待っている。剪定の失敗の後の午後。電気屋でCDRを返品しようか迷っている。図書館で予約した本を取りに行く機会(しお)を逃した。クラゲが…

犬10

今日も目覚めはよくない。早起きできない。お酒も残っている。何となく人に会うのがこわい。一書かなきゃ落とし前はつかない。余計なことをする時間を埋めていく。いつでも書けるように、iPhoneのバッテリーを交換した。これが新品?と思うくらいバッテリー…

犬8

2015/1/24 目が覚めて、携帯の画面をのぞく。待ち受け画面にうつるイルカの頭上に0時3分の表示。日を跨いではいるけれど、起きるには早過ぎる。もう少し、現実的に継続していけそうな起床時間ならよかった。この国のどこかに、いるかもしれない、毎日0時ちょ…

犬7

友達がいなくなった。跡形もなくいなくなった。友達の集印帳が紙切れになった。友達のアルペジオが廊下で鳴った。友達を一一袋頬張った。友達をミキサーにかけた。友達に電話をかけた。友達が過去になった。友達がシャツの模様になった。友達が跡形もなく溶…

犬6

髭剃りを失敗した。シェービングクリームをたっぷり肌に馴染ませて剃ったはずなのに、皮膚が削げた。痛くもないのに、血はとまらない。他の場所を剃っている最中、傷口が唇が、口の中が顎が血に染まる。ルーズに血が垂れる。右の人差し指の血、左の手の甲の…

世俗犬

俺は小説を書きたい。俺は小説になりたい。俺は小説を叶えたい。俺は小説と結ばれたい。小説のための小説を書いて、その小説をどこにも提出せずに小説と事実婚をする。俺は小説に泊まりたい。俺は小説のカプセルに泊まりたい。俺は小説のコスモスに泊まりた…

犬2

俺は小説になりたいんだよ。俺は小説に変身したいんだよ。小説家は嘘つきだけど、小説は本当なんだ。血が滴るような小説に憧れるんだよ。小説の条件は、名乗ることだよ。俺は小説だって言うことだよ。それだけだよ。小説なんて文字が並んでいるだけだよ。か…

鬱犬

こんなこと読ませちゃダメだ。どうかしている。 冷静になってからまた書かせてください。 僕の伝え方が下手だっただけです。反省しないと。 今日の自分は最低だった。インチキまみれのウソつきで。死んだら、それ以上は人に迷惑をかけずに済むけれど、やりた…

苦虫犬

今日も目覚めはよくない。早起きできない。お酒も残っている。何となく人に会うのがこわい。胸の奥の鳩時計。一緒にするな。書かなきゃ落とし前はつかない。余計なことをする時間を埋めていく。いつでも書けるように、iPhoneのバッテリーを交換した。これが…

過去犬

生まれた時からずっと、いつ死ぬかわからないまま暮らしている。27年くらい。いつ動かなくなってしまうのかわからない怖さより、わかってしまう怖さのほうがつらい。「人生は一回だけ」、「死ぬということは、2016/4/6 皆同じこと」。ある程度のスパンで、…