冬の犬

狂気を呼ぶ季節 寒い時期に、わたしの精神と肉体はおかしくなることに気づいた。夏は仕事周りや人間関係も落ち着いていて、冬は奇行に及びがちで人間関係の終わりを多く経験してきた。振り返るとそんな気がするし、きっと間違っていない。冬場からまだ寒さの…

人と犬

時を押しのけ 時に押しのけられ 底に埋まった古い本 誰よりも言葉を失くしたい 誰よりも言葉を打ち消したい 上手を消したい 下手を消したい 普通を消したい これを書いたら死んでもいいと思えること そんなことだけ書けばいい 死ぬこととは違う死に方 長く穏…

素直犬

Twitterから退場したくなる時 Twitterという制度とTwitterという糸口には本当にお世話になりました。Twitterがあったから私の人生があったのかなと思う時もあります。わたしの交際遍歴には必ずTwitterが関与しています。Twitterで「死にたい。誰か一緒に死ん…

文章犬

文章は誕生 文章は表彰 文章は国王 文章は濫用 文章は表情 文章は抑揚 文章は浴用 文章は6畳 文章は2錠 文章は窮状 文章は動揺 文章は童謡 文章は同様 文章は試乗 文章は常用 文章は無情 文章は戦場 文章は洗浄 文章は愛情 文章の登場 文章の途上 文章の土壌…

脱走犬

脱皮の痛み 砂糖味のしない朝 絞首刑台の赤いタオル 無尽蔵に吠え続けるスピーカー 歌謡ロック後ヒップホップ 書けない私に容赦ないバースの雨 コンバースにかけた防水スプレー 言葉の檻 身体の檻 自我の檻 出たい 出したい 液体を仕舞わない 人体を縛らない…

犬縛り

何かを書きたいのに、真っ白な画面を見ると身動きが取れなくなってしまう。文章が言葉が生まれ出てくるという感覚のないまま無理やりにインクの痕を引き延ばすようなことしか出来ていないような気がする。今書けなければ意味がない、枯渇してると思うなら限…

犬史上

2015/1/23 深夜2時47分。もう2年以上シーツの掛かっていない布団の上で彼は正座している。彼は右腕を布団の上に振り下ろす。血圧をあげながら、両足の密着をくずしながら、ホルモンのバランスをくずしながら。プラスチック製の密封容器をもうひとつの密封容…

残骸犬

俺は小説を書きたい。俺は小説になりたい。俺は小説を叶えたい。俺は小説と結ばれたい。俺は小説に泊まりたい。俺は小説のカプセルに泊まりたい。俺は小説のコスモスに泊まりたい。小説という名前がほしいわけじゃない。小説の戸籍がほしいわけじゃない。小…

保釈犬

自分の外に言葉を出さなければ、言葉は零れ落ちてしまう。生きた証も旅の印も地面に溶けてなくなってしまう。言葉が生まれ、いきていた時間そのものを忘れてしまう。文章を全く書けなかった時期にわたしはそれを痛いほど思い知らされていた。そして同じ過ち…

犬の目覚め

見栄と上着を脱ぎ捨てる ひとりの夜にひとりの湯に浸かる 今は一本調子の歌と言葉に実が成る日まで 犬という管を何度も鳴らす 犬という牙を何度も研ぐ 散歩をするように白紙に足跡を残す 珈琲を飲むように舌と喉に灯す カーテン越しに血を沸かす 真っ白な太…

小説は

小説は焼け跡である 小説は師である 小説は料理である 小説は身体の関係である 小説は衝動である 小説は空気を抜き忘れた真空パックである 小説は振り付けである 小説は不死身の儚さである 小説は地図である 小説はこじつけである 小説は我儘である 小説は孤…

空白犬

効き目の足りない言葉を日記に隠す 猛毒なら 劇薬なら 誰かにすぐに見せられる 風の吹かない部屋 身も心も無風状態 最早足せない 最早引けない 知ってる言葉を忘れてしまった 仮面に頼り 箱庭に頼り 言葉に縋る 蛇口を捻る 生えることも 揺れることもない 花…

虹の犬

いい瞬間だけを閉じ込める 虹色の生地に閉じ込め焼き菓子にする 不安は蟻が担いで持って行く 理解の中に滲む汗 冷静の灼熱 不安は犬で 無心は猿だ 否認の低音 他人の和音 理屈に浸かったたくわん 名前だけ新しい駅 夜でも朝でもない無人島のにおい 尽きても…

犬電話

黒い食堂と無色の心臓 血を測る温度計は壊れた洞穴からの声 それは毛むくじゃらの声 チカチカ点滅する声 空気の薄い森へ招待する声 砂時計を逆さまにする声 信じる声 信じられない声 今も振り絞れない声 脱ぎ捨てられない声 命を縫った熊の額に落とした涙が…

途上犬

血まみれのまま伸びた夜に横たわる 明日と昨日が今日の真ん中で渋滞している 顔の上のハムエッグ肉汁を垂らしてる 鈍い痛みは上にも下にも振り切れない 部屋の出口 会話の糸口 見たことのない入り口 全て封鎖されたまま 味のない南インドのお茶1杯以外に水分…

犬言葉

新しい言葉 ランボオの言葉 河豚の毒の言葉 塩胡椒だけの言葉 衣擦れを塞ぐ言葉 掃除機をかける言葉 おしぼりと焙じ茶の言葉 マカロニとベーコンの言葉 土鍋で炊いた言葉 日の出と野良猫の言葉 土竜と糠床の言葉 虹と小鳥の言葉 運命をロックで飲む言葉 野生…

薄犬

部屋が壁際だけになってしまったみたいだ。今のわたしには上も下もよく見えない。身動きなんて取れない。抱えている口にできない問題で頭がいっぱいというか、頭の中はそれ以外ない。犯罪を犯したわけでもないのに執行を待つ死刑囚のような気分から逃れられ…

犬湾ラーメン

深夜1時25分 わたしは脳を締め付けられるような痛みで目を覚ました。文章を書くために目覚めることが苦痛になっているように思えてしまった。寝苦しい、起き苦しい朝だった。わたしは何をしているのか。わたしはなぜ生きているのか。文章はただ書けばいいだ…

犬クスリ

泥濘の重みを両足に履いて 雲ひとつない空の下 銀行へ野暮用 裏通りにも堅気だらけ 途中の駅で 気力なく 階段選べず 昼間に街を彷徨く理由を偽り 目的を終える 茶店でいつもの珈琲 いつもの顔と馬鹿話 生存方法 伊集院光 巻き起こる春風 脳の草むらなびくク…

犬に疲れて

古びた毛布 高さの合わない枕 焼けたカーテン 発光するゴミ袋 沈没した部屋 不動の空 回転する街角 休まないスピーカー 唸るベース 解すドラム 奪われたギター 脳を揺らす鍵盤 手紙を読む犬 呼吸に疲れた リボンに疲れた 缶詰になりたい 眠っていたい 睡眠を…

犬問答

予定が崩れてしまった。1時半には目覚めて、そのまま起床できそうだったのに、油断してダラダラと寝過ごし、時計はどんどん先へと進んでしまった。今9時43分になろうとしている。思う通りに事が運ばないと心は乱れる。それが朝起きれなかった程度のほんの小…

溺死犬

死ぬよりはマシだと思った時 わたしは逃げた 仕事から逃げた 電車から逃げた 人から逃げた 死ぬよりはマシだと思った時 レモンサワーをエナジードリンクで割った それを真っ黒な魔法瓶に詰めた 死ぬよりはマシだと思った時 鯖缶にカレー粉をかけた 名古屋名…

はじまりはいつも犬

わたしは文章が書きたかった。ただそれだけだった。文章を書くことが夢で、文章を書くことが生きることそのものだった。いつの日にか自分の文章を紙に刷りたいと思っていたけれど、それ以前に文章が書ければ幸せだった。それだけが情熱を注ぐ場所だった。文…

INU's gonna be alright

騒がしい頭 星に焼き付いた肉球 投げやりが刺さった静脈 言葉をマドラーで溶かそう 長距離バス 誰もいない椅子 静岡おでん 古い喫茶店 ジャーマンドッグ 薔薇とポトス お揃いのパジャマ お揃いの方言 生卵のち交差点 実況中継の手引き 「ジャンルに囚われな…

元祖犬

「このままではいけないことはわかっている」という標語は無意味だ。Wi-Fi回線で使っている古い携帯電話のガラスを無意識に砕いていた。液晶画面の左端にしかくでもまるでもない黒ズミができている。自分やモノへの暴力発作。いくつになってもやめることがで…

狂犬

無名の名 約束の死 目的はなく 今も傷だらけ 誕生 蒸発 誕生 消滅 繰り返し無になる浴槽の思いつき 全てを忘れさせる火の魔法

香りの咆哮

住処のない香り 見えない香り 届かない香り 変わりゆく香り 迎え入れる香り マグカップに住む波紋 阻まれ吠える香り 珈琲色の咆哮 チリソースの舞 卵の掛け布団 伝わらず伝わることを願う香り 飲み干すことで抱きとめる香り 窓を開ければ登り狂う香り wi-fi…

犬絵画

いつでも どこにでも 外へも 中へも 地球の子宮へ 人類の大地へ 付け根の鼓動で 時の皺を刻み 色とりどりの血を滲ませる 黄金の息を忍ばせて 見えないスカーフを手にする 時間を賭けて バケツのインクに筆を捻じ入れ 空に浮かんだクジを引く 音の兵隊は 列か…

犬写真

写真は墓場じゃなかった 写真は過去だと思っていた 切り取られた一瞬で 蘇った血液で動くタイムマシーン シャッターを鳴らして チョッパーで切り刻んで 時のお刺身 それが写真

染め犬

神様達を染めた 白い恋人達を染めた 黒い毛根達は燃えた 色素は景色に流れていった 白黒映画に隠れ家を見つけた 青白い肌とビニール袋とバター こんがりと色づく頭上のパン 懐かしい色を全て隠して 美しい色を全て騙して 失った朝と携帯電話 動物園の中で育…